【シリコンバレー=岡田信行】米マイクロソフト(MS)は2日、携帯電話機大手のノキア(フィンランド)から、主力の携帯電話事業を総額54億4千万ユーロ(約7140億円)で買収すると発表した。MSは独自開発したスマートフォン(スマホ)用OS(基本ソフト)「ウィンドウズフォン」の普及に力を入れている。ノキアからの事業買収でスマホ分野に注力し同分野で優位に立つグーグルやアップルを追撃する。 MSとノキアの発表によると、MSは現金37億9千万ユーロでノキアの全社売上高の約50%を占める携帯電話機事業を買収するほか、ノキアに特許使用料として16億5千万ユーロを支払う。ノキアが11月19日に開く株主総会で承認を得るなどしたうえで、2014年1~3月期の手続き完了を目指す。 MSはノキアから約3万2千人の従業員を受け入れ、ノキアのスマホブランド「ルミア」を残す見通し。ノキアは2011年に提携して以来、MSの協力メーカーで、今後はウィンドウズフォンの開発や販売を進める。 米調査会社IDCがまとめた13年4~6月期のスマホのOS別世界シェアをみると、米グーグルが開発し、韓国サムスン電子などが採用している「アンドロイド」が79.3%、米アップルの「iOS」が13.2%となっており、MSのウィンドウズフォンは3.7%にとどまる。 ノキアはスティーブン・エロップ最高経営責任者(CEO)がCEO職を退き、携帯電話部門トップとなる人事を発表した。エロップ氏はMSへの事業売却に伴って古巣のMSに復帰する。MSはスティーブ・バルマーCEOが12カ月以内の退任を表明したばかり。 MSはビル・ゲイツ会長も加わった特別委員会で後継者選びに着手しており、ノキア移籍前にMSのビジネス部門をけん引していたエロップ氏が改めて有力候補として浮上した形ともなる。 かつて世界一の携帯電話メーカーだったノキアはスマホで苦戦している。出遅れをMSとの提携で挽回しようとしてきたが、MSのOSを搭載したスマホ「ルミア」は着実に伸びているもののシェアは数%にとどまる。 携帯事業を売却した後は、子会社のノキア・ソリューションズ・アンド・ネットワークス(NSN)が展開する通信機器や、地図情報サービスが主体となる。ノキアは今年、独電機大手シーメンスからNSNの株式を買い取り完全子会社化した。